田殿丹生神社|和歌山|

2020年3月18日

田殿丹生神社は、円錐形の神奈備「白山」の麓に鎮座する古社。

明治時代後半、国家神道運営の経費節減のため「神社合祀令」が発布された。村の各地域で信仰されてきた小規模神社が、村の有力神社に合祀させられた時代である。

そのようにして合祀された神社が、当社の本殿瑞垣内に配神として祀られている。

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瑞垣の内側

さあ、これで本殿にて参拝を終えた私は、このまますぐに石段を降りていく気になれず、瑞垣に沿ってプラプラと東へ歩いていくと、、、

なんと、瑞垣の戸が開いているではないか、、、
まるで私を誘っているかの如く、、、

どうする、オレ!神聖なる場所に勝手に入っていいものなのか!

悩みに悩んだ。およそ5秒ぐらい悩んで、、、入った。

東の配祀神の社(春日神社)

本殿の東側に祀られている社である。これらの神社は、今、それぞれの地域にも祀られている。

前述の通り、明治の終わりごろの「神社合祀令」により、村の各地域で信仰されていた小規模神社がこちらに合祀された時代の名残と思われる。

里神社(大賀畑)

祭神は、猿田彦命(さるたひこのみこと)。道開きの神。

豊玉神社(大谷)

祭神は、豊玉姫命(とよたまひめのみこと)。海の神。子安の神。

水神社(大谷)

祭神は、罔象女神(みつはのめのかみ)。水の神。

東山神社(田口)

祭神は、国常立命(くにのとこたちのみこと)。万物創生の神。

水神社(田口)

祭神は、罔象女神(みつはのめのかみ)。水の神。
そして、日根藤六命(ひねのとうろくのみこと)。日根藤六は江戸時代の有田郡の代官。(後述する)

妙見神社(船坂)

祭神は、国常立命(くにのとこたちのみこと)。万物創生の神。
そして、大物主命(おおものぬしのみこと)。妙見に大物主命???

春日神社(井口)

祭神は、天児屋根命(あめのこやねのみこと)。祝詞の神。

八幡神社(長谷)

祭神は、大鷦鷯尊(おほさざきのみこと:仁徳天皇)???
本来、八幡神社は父の応神天皇で、仁徳天皇は若宮に祀られることが多いのだが、、、

常立神社(田角)

祭神は、国常立命(くにのとこたちのみこと)。万物創生の神。

天神社(田角)

祭神は、菅原道真朝臣(すがわらのみちざねのあそん)。学問の神。
そして、姥明神(うばみょうじん)。1600年頃に村を救った田角村のお婆さん。(後述する)

八王子神社(田角)

祭神は、八柱御子神(はちはしらのみこがみ)。牛頭天王(素戔嗚尊)と頗梨采女(櫛稲田姫命)との間に生まれた八柱の皇子たち。八将軍とも。

日根藤六(水神社)

寛政2年(1790年)の夏のこと。有田川の大洪水で須谷の堤防が決壊した。この堤防の復旧を果たさんと一人の男が立ち上がった。当時の有田郡奉行所代官「日根藤六」その人である。

藤六は自ら陣頭に立って復旧計画を作成し、築堤の大事業を進め、寛政5年(1793年)の夏、見事に竣工し庶幾の目的を果した。

それから160年の時が流れて昭和28年。そう、忘れもしない昭和28年7月18日。和歌山北部を襲った梅雨の終わりの豪雨により有田川は決壊し大洪水。未曽有の大災害となった。

しかし、あの時「藤六」が築堤した堤防は、びくともせず決壊しなかったという。

姥明神(天神社)

姥明神は田角村の天神社からの合祀で、その天神社は姥ヶ滝の傍らに鎮座している。

その姥ケ滝の説明文に、「田角村史」からの抜粋として「姥明神」について記されているので紹介しよう。

時は慶長年間(1600年前後)に1人の姥がいた。

この村に年貢の算出根拠とするべく検地に来た役人に、「この奥の田んぼは稲の出来が悪いのじゃよ」と訴えて検地を免れた。

実は、この滝の上には9万平方メートルもの隠田があった。

村人はその姥に感謝して、後に滝壺の近くにある小祠に姥の霊を祀ったという。

本殿

間近に見る本殿。畏れ多し。

西の配祀神の社(吉備神社)

金刀比羅神社(井口)

祭神は、大穴牟遅命(おほなむぢのみこと)。縁結びの神。経営の神。

吉備名方濱神社(長田)

祭神は、天照皇大神。皇室の祖神にして、日本国民の総氏神。
吉備名方濱神社は元伊勢ともいわれる由緒ある神社である。

王子神社(上中島)

祭神は不詳らしい。

許刀比羅神社(上中島)

祭神は、大穴牟遅命(おほなむぢのみこと)。縁結びの神。経営の神。

妙見神社(出)

祭神は、国常立命(くにのとこたちのみこと)。万物創生の神。

常立神社(尾中)

祭神は、国常立命(くにのとこたちのみこと)。万物創生の神。

八幡神社(尾中)

祭神は、誉田別命(ほむだわけのみこと:応神天皇)。勝利の神。

楠森神社(尾中)

祭神は不詳らしい。

稲荷神社(角)

祭神は、倉稲魂命(うかのみたまのみこと)。食物の神。

吉備神社(井口)

祭神は、吉備大神(きびのおおかみ)。

かつてここは吉備町であった。市町村合併で有田川町になったのだ。吉備町だから吉備大神が祀られている。

この和歌山になぜ吉備という地名があるのか。吉備真備大臣の領地があったとか、吉備出身の尾張氏が入植したからとか、いくつかの説があるが、実はよくわかっていないらしい。

國主神社(長田)

祭神は、大国主命(おおくにぬしのみこと)。縁結びの神。

水神社(長田)

祭神は、罔象女神(みつはのめのかみ)。水の神。

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その他の境内社

白山神社

この山の頂上に鎮座するのが、境内社「白山神社」。祭神は菊理媛命(くくりひめのみこと)

菊理媛命

古事記には登場せず、日本書紀に登場する女神。

伊弉諾尊と伊弉冉尊の別離の言い争いをしていた時、菊理媛命が現れて伊弉諾尊に何かを伝えた。それを聞いた伊弉諾尊は、菊理媛命を褒めて、そのまま立ち去った。

出自もわからない、何を言ったかもわからない。とても神秘的な女神である。そういう意味でも瀬織津姫に並んで、人気の高い女神の一人だ。

夏瀬神社

最後に。

田殿丹生神社の社頭、道向かいの堤防にガッチリ鎮座するのが「夏瀬神社」

夏瀬神社の祭神は、天照大神であらせられる。

その横にある小さな祠が「弁財天神社」。祭神は「弁財天尊」とのこと。弁財天尊とは、なんとも仏教的な神名である。

ちなみに、夏瀬神社のバックに聳える大楠は、かの室町幕府第3代将軍「足利義満公」が金閣寺を建立するにあたり、天井の一枚板に使うために伐採した切り株から生えてきた蘖(ひこばえ)だという。

金閣寺の建立が1400年頃であるからして、(ひこばえ)の樹齢は600年を超えるということになろう。

最後までお読み頂き、ありがとうございました!

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