阿倍王子神社|大阪|本殿向かい側の総合末社のパワーが素晴らしい!

2021年4月8日

阿倍王子神社は、大阪市阿倍野区阿倍野元町にある神社。熊野詣の街道沿いに点々と設置された熊野九十九王子の一つで、大阪府下の王子社としては、遷座することなく創建時の場所に鎮座し続ける唯一の王子として貴重な存在となっている。

当記事では、そんな歴史ある阿倍王子神社の創建と変遷、祀られている多くの神々とご利益についてご紹介していこうと思う。しばらくお付き合いいただきたい。

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阿倍王子神社について

阿倍王子神社の概要

  • 所在地    大阪府大阪市阿倍野区阿倍野元町9−4
  • 電話番号   06-6622-2565
  • 主祭神    熊野王子神(熊野三所権現)
  • 社格     九十九王子の一つ
  • 公式HP    https://abeouji.tonosama.jp/

アクセス

最寄り駅

  • 阪堺電気軌道上町線「東天下茶屋駅」徒歩3分

車でのアクセス・駐車場

  • アクセスは容易
  • 駐車場あり(無料)

阿倍王子神社の創建

当社に伝わる「摂州東成郡阿倍権現縁記」によると、「創建は仁徳天皇の御代」。すなわち、4世紀末~5世紀初頭にかけての創建となろうか。

仁徳天皇の夢に三本足のからすが現れた。仁徳天皇がその烏を探させると、当地にいたため神社を創建した。

とある。

別の説として、

飛鳥時代のこと。難波宮への遷都に伴いここに本拠を移した古代豪族の阿倍氏が、氏寺「阿倍寺」と氏神社「阿倍社」を創建。大きな寺院であった。
がしかし、再び都が飛鳥に戻されたので、阿倍氏の本拠も大和へ移動。これによって阿部寺は衰退し四天王寺に併合され、ここには氏神社の阿倍社だけが残った。

いずれにしても、奈良時代には寂れてしまっていたようだ。平安時代に入ると、826年、空海が阿倍社を再興。そして、疫難退散の祈祷を行い疫病を治めたことで、朝廷より「痾免寺あめんでら」の勅額を賜っている。

そして、ちょうどそのころに熊野信仰が興り、熊野九十九王子と呼ばれる多くの王子社が設置された時期だった。当社が四天王寺と住吉大社の中間にあるという好立地だったため熊野王子を祀り熊野九十九王子の一つとなった、

阿倍王子神社の祭神

本殿に祀られる祭神は、伊邪那岐命・伊邪那美命・速素戔嗚命・応神天皇の4柱。

熊野王子社であったことからして、当初は熊野三神の御子神が祀られていたことであろう。それがいつの頃か、親神すなわち熊野三山の主祭神であるところの伊邪那岐命・伊邪那美命・速素戔嗚命の3柱に替わったと思われる。

応神天皇が祀られているのは、明治40年に安土町の男山八幡宮を合祀したから。

熊野三山

熊野三山とは、熊野本宮大社・熊野那智大社・速玉大社の三社の総称。三社ではなく三山と「山」を使うのは、熊野は神仏習合の象徴といわれる通り、寺院の側面が大きかったからだろうと推察する。

三山の主祭神は以下の通り。
熊野本宮大社・・・家津御御子大神(素戔嗚尊)
熊野那智大社・・・熊野夫須美大神(伊邪那美命)
熊野速玉大社・・・熊野速玉大神(伊邪那岐)

阿倍王子神社のご利益

前述したように空海が勅命により疫病退散の祈祷を行った場所であることから、厄除け、災難除け、病魔退散、無病息災のご利益がいただける。

また、王子神社の側面として、熊野三山の遥拝所としても機能するので、熊野信仰におけるご利益も頂けよう。すなわち、厄除け・無病息災・病気平癒・家内安全・事業繁栄となる。

さらに、各々のご祭神からのご利益も期待できるのである。

伊邪那岐命と伊邪那美命は、多くの国土を生み多くの神を生み、国土の修理固成を成し遂げられたので、良縁成就、子宝のご利益が、さらに禊祓いを開発されたので、方位災難除けのご利益がいただける。

速素戔嗚尊からは、縁結び、殖産工業造船、厄除け、酒造上達のご利益が、応神天皇からは、学術技芸文化の発展、安産のご利益がいただけるという。

もちろん、阿倍野の総鎮守であることは言うまでもない。

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阿倍王子参拝記録

大阪の南の玄関口として栄える天王寺駅前から阪堺電気軌道の上町線に乗って東天下茶屋へ向かうこととしよう。浜寺行きと我孫子道行きがあるが、どちらに乗っても東天下茶屋駅に行くことができるからご安心頂きたい。

駅と神社と熊野街道の位置関係は下図の通りである。

このように、阿倍王子神社は熊野街道に面していることがわかる。

社頭

これが、熊野街道側の鳥居。鳥居の奥、天を突き上げるように聳える大木が印象的である。

ご神木

大木は4本。いずれもご神木であり、それぞれに宿る精霊を祀っている。

  • 茂杜能木霊神(もりのこだまのかみ)
  • 汰紀能木霊神(たきのこだまのかみ)
  • 多摩能木霊神(たまのこだまのかみ)
  • 波多能木霊神(はたのこだまのかみ)

水神社

神社参拝においては、手水舎で手口を清めたあと、祓戸社で罪穢れを祓っていただき、そして本殿に参拝するという手順を踏むのがよいとされるが、祓戸社の無い神社も多数ある。そんな時は、水神社が無いか探してみるとよい。

水は、生命の維持に欠かせないものであるだけでなく、汚れを洗い流してくれる浄化の作用を持つ。がゆえに、祓戸社の代わりになると考えるのだ。

境内の隅っこに水神社があった。小さな祠だが、いい波動を放っている。

祭神は、罔象女神みずはのめのかみ高龗神たかおかみのかみ闇龗神くらおかみのかみの3柱。日本を代表する水神が勢揃いだ。

罔象女神みずはのめのかみは湧水や井戸そして用水路のような里の水を司り、高龗神たかおかみのかみ、は、山に降る雨を司る神とされ、闇龗神くらおかみのかみは、谷を流れる川を司る神という具合に分類されることが多い。

拝殿・本殿

本殿には、熊野三山の祭神であるところの、伊邪那岐命、伊邪那美命、速素戔嗚命の三柱に加えて応神天皇が祀られている。

王子神社の側面として、熊野三山の遥拝所としても機能することを忘れてはなるまい。

二拝二拍手一拝。

う~ん。あくまでも私の印象ではあるが、こちらの本殿は無機質だと感じた。

境内社のご案内

本殿への参拝では「無機質感」を感じたが、むしろ境内社の方にこそ神気を感ずる。ここからは境内社に祀られる神々について、ご紹介していこうと存ずる。

御烏社と願掛御烏

本殿の東側にチョコンと鎮座するからすの銅像。これは御烏社みからすしゃという。創建由来の三本足の烏「八咫烏やたがらす」を八咫烏大神やたがらすのおおかみとして祀っているそうだ。

八咫烏(やたがらす)

神武天皇の東征の際、ナガスネヒコの妨害に遭い河内から大和へ入ることが出来ず、やむなく熊野から紀伊半島を縦断するルートをとった。道なき道を行かねばならなかった皇軍の助けとして道案内をしたのが3本足の大きなカラス「八咫烏」であった。導きの神、厄除けの神として信仰を集めている。

願掛御烏絵馬に願い事を書き御烏御幣を奉納することで、八咫烏大神が熊野まで思いを届けて頂けるという趣向のようだ。

葛之葉稲荷神社

八咫烏大神のさらに東側に、立派な覆屋に守られた社殿がある。葛之葉稲荷神社だ。祭神は、葛之葉稲荷大神、末広大神、萬直大神、白玉大神、宝玉大神、玉姫大神、日切大神、大高大神の8柱。全て宇迦之御魂大神である。

葛之葉稲荷大神は、伝説として伝わる安部晴明の母の名で、その正体は霊狐だとされている。その他の神々は、近隣の稲荷社を合祀したものだろう。

ちなみにこの覆屋の中の社殿は見ることができないが、実は本殿に合祀した応神天皇が祀れれていた安土町の旧男山八幡宮本殿を流用しているとのこと。煌びやかな装飾が施された社殿である。登録有形文化財に指定されている。

総合末社

本殿の向かい側に東向きに鎮座するのが「総合末社」と称する末社。もうちょっと洒落た社名にできなかったのだろうか、、、と、誰しもが思うはずだ。

がしかし、そんなダサい社名も吹き飛ぶぐらいの強烈なパワーを持った社殿であることは、神前に立った者にしかわかるまい。

祭神は、天照皇大神・豊受大神・住吉大神・春日大神・金刀比羅大神・恵比須大神・天満大神・高良大神・由賀大神。錚々たるメンバーが揃っている。この中で説明が必要な神は、高良大神と由賀大神だろうか。

高良大神

福岡県久留米市にある高良大社の主祭神高良玉垂命こうらたまたれのみことを指すと思われる。記紀に登場しない神で、その正体には諸説ある。厄除け・延命長寿・交通安全はじめ生活全般の守護神とされる。

由賀大神

岡山県倉敷市にある由加神社本宮の主祭神由加大神ゆかのおおかみであろうと思われる。その正体は、手置帆負命たおきほおいのみこと ・彦狭知命ひこさしりのみことという木工を司る神と、神直日命かむなおひのかみという穢を祓い禍を直す神の3柱の総称。

この総合末社の社殿は、阿倍王子神社の旧本殿だそうで、登録有形文化財に指定されている。

摂津名所図会の王子権現

これが、1795年頃に刊行された摂津名所図会せっつめいしょずえに描かれた王子神社である。王子権現と称していたようだ。

手前の人通りの多い通りが熊野街道であろう。街道沿いに鳥居があり、内参道に大木が4本。まさに、今と同じ様子である。

しかし本殿の位置が違うようだ。江戸時代の社殿は、鳥居の正面奥に西向きに鎮座している。

当時の本殿位置を現在の境内に当てはめた時、なんと、総合末社あるいは水神社のある場所に相当すると思われるのだ。

阿倍王子神社の本殿が無機質だったのに対して、総合末社からや水神社からは旺盛な神気が放たれていた。これは、そこが本来の聖地だったことと無縁とは思えないのである。

最後までお読み頂き、ありがとうございます!

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