氷室神社|奈良|東大寺参道に鎮座する “かき氷” の神社

 

氷室ひむろ神社は、奈良市春日野町に鎮座する神社。延喜式神名帳に記載ある式内小社「高橋神社」の論社となっている霊験あらたかな古社である。

東大寺にほど近い立地ではあるものの、普段は立ち寄る人も少なく、境内は鹿たちの憩いの場となっている、とても静かな神社だ。

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氷室神社について

氷室神社の創建と歴史

都祁の氷室

当社の由来は16代仁徳天皇の御代にまで遡る。

仁徳62年の夏のこと。仁徳天皇の兄の額田大中彦ぬなかおおなかつひこ皇子が都祁つげに猟に出かけたところ、小さな庵を発見した。その下には窟があった。

当地の闘鶏稲置大山主つげのいなぎのおおやまぬしに尋ねると、それは氷を貯蔵する ”氷室” だという。

皇子がその氷を天皇の献上したところ大層喜ばれ、それ以降は毎年春分の日に氷が配られるようになった。

日本書記より抜粋

(都祁は今の天理市福住あたりらしく、氷室跡や復元氷室が設置されている。)

19代允恭3年に、都祁氷室(福住氷室)に守護神として氷室神が祀られた

吉城氷室

時が流れて奈良時代。藤原京から平城京に都を遷したことを契機に、和銅3年(710年)、新たに吉城よしき川(水谷川)の上流域の春日山(三笠山)北山中に氷室を造り、そこから献上されるようになった。

当時は、吉城よしき氷室や水谷氷室などと呼ばれたようだ。

そして、氷室の守護神として氷室神を祀った。これが当社の創祇であるという。

(水谷川上流の日月磐があるあたりだったという。)

そして、その神社は、古くは高橋氷室神社と称したという記録があるらしく、ゆえに、延喜式の高橋神社の論社となっているとのこと。

氷室神社

平城京から平安京へ遷都されたとき、いよいよ吉城氷室の役割も終わることになる。社伝によると、氷室神が現在地に遷座されたのは、遷都後の貞観2年(860年)だとのこと。

その後、春日大社の別宮として、春日大社・興福寺の支援を受けて運営・維持されてきたが、明治維新後は、氏子による管理となっている。

氷室神社の祭神

祭神は、主祭神に闘鶏稲置大山主命つげのいなぎのおおやまぬしのみことを祀り、左右に 大鷦鷯命おおさざきのみこと額田大中彦命ぬかたのおおなかひこのみことを配祀する。

闘鶏稲置大山主命

日本書紀に登場する古墳時代の豪族 ”闘鶏国造” の一人。闘鶏国造は、神八井耳命かむやいみみのみことを始祖とする多氏の一族とされ、13代成務天皇により国造に任命されたと伝わる。

前述の氷室の逸話により、氷を作る人の祖神として祀られているのでろう。

大鷦鷯命

16代仁徳天皇のこと。

記紀によると、


国見をしたときに人民の家々から竈の煙が立ち上っていないのを見て人民の貧困を憂い、3年間の免税を断行。自らも倹約につとめ、さらに3年間の免税。その甲斐あって、人民の暮らしは豊かになった。

とある。それゆえに聖帝と讃えられた、儒教で言うところの徳治主義の天皇だ。

こちらも、氷室逸話の登場人物、すなわち氷を献上された天皇であることから祀られているに違いない。

額田大中彦命

15代応神天皇の第一皇子。であるからして、16代仁徳天皇の腹違いの兄となる。

こちらも、上記2神と同じく氷室逸話の登場人物、すなわち氷を献上した皇族として祀られているものであろう。

氷室神社のご利益

氷室の神ということからして、製氷業者の守護神と言えよう。今も献氷祭には全国から製氷業者が集結するという。

あるいは、その綺麗な堅い氷から氷菓子(かき氷とも言う)を作る人の守護にもなって頂けようか。

さらには、綺麗な堅い氷の上をスイスイと滑る人(スケーターとも)の守護をもして頂けるやもしれない。いやこれは、なんとなくそう思うだけだ。

そして、この後の参拝記録で述べることになるが、学業向上と芸能上達のご利益も頂けるスポットもある。

氷室神社 参拝記録

近鉄奈良駅前から東大寺方面へと大通りを西へ坂道を登っていく。左手には奈良地方裁判所、奈良県庁、右手には興福寺の広い境内が見える。

県庁東の交差点から先は、少し道幅が狭くなるが、さらに直進すること270mで、左手に朱色の鳥居が見るだろう。そこが、本日の目的地であるところの氷室神社だ。

ちなみに、道を挟んで向かい側が奈良国立博物館である。

氷室神社の駐車場

鳥居に向かって左側に、氷室神社専用の駐車場がある。60分500円。なかなかリーズナブルだが、最大料金設定があるのかどうかは定かではない。記載がないから設定がないものと考えざるを得ない。

鳥居に向かって右手にも駐車場がある。こちらは20分400円だが、3時間最大1800円。

どちらを利用するか、迷う所だ。私は20分400円をチョイスした。なぜなら、20分以内で参拝すれば100円安いからである。実際、400円で済んだ。

大鳥居

これが大鳥居。朱色の両部鳥居りょうぶとりいではあるが屋根がない。千本鳥居と両部鳥居は、外国人観光客が喜ぶフォルムだと聞いたことがある。

両部鳥居

本体の鳥居の柱を支える形で稚児柱があり、その笠木の上に屋根がある鳥居を両部鳥居という。

また ”両部” とは密教の宇宙観を表す金剛界こんごうかい胎蔵界たいぞうかいを意味する金胎両部こんたいりょうぶ(金剛・胎蔵)のことを指している。

両部鳥居は、神仏習合時代の名残と言えよう。

内参道

住吉神社

鳥居をくぐって、内参道を少し進んだ左手に鎮座するのは住吉神社

祭神は、

底筒男命そこつつのおのみこと中筒男命なかつつのおのみこと表筒男命うわつつのおのみことのすなわち住吉三神と、

瀬織津比咩せおりつひめ速開都比咩はやあきつひめ気吹戸主いぶきどぬし速佐須良比咩はやさすらいひめのすなわち祓戸四神はらえどのししん

 

住吉三神は、伊弉諾尊が黄泉の国の穢れを洗い流すために行った「禊祓」の際に現れた神々。

祓戸四神は、神道において毎年6月と12月の末日に行われる大祓おおはらえの神事で奏上される祝詞「大祓詞おおはらえことば」に登場する神々。諸々の禍事まがごとつみ穢れけがれを祓ってくれる神々。

 

いずれも、祓いの神として祀られているのであるからして、まずはこちらでご自身の罪・穢れを祓っていただいた後に、本殿へお進み頂くことをお勧めしておこう。

「いやいや、私は何の罪を犯してないし、穢れるようなこともしてないから大丈夫。」と思われる方もいらっしゃるかもしれないが、かのアマテルは「肉食は穢れ。菊を食べなさい。」と言ったという。

こと左様に、人とは知らぬ間に穢れているものなのだ。

いずれにしても理屈ではない。神社参拝とはそのような手順を踏むべきものなのである。

表門

表門。表門から東西に廊が張り出している構造だ。この表門は禁裏御所の日華門にっかもんを移設したのが始まりだとか。建築様式は四脚門しきゃくもん奈良県指定文化財となっている。

四脚門

四脚門(よつあしもん、しきゃくもん)とは日本の門の建築様式のひとつ。門柱の前後に控柱を2本ずつ、左右合わせて4本立てたもの。四足門とも表記される。 重要文化財として残る日本の門の建築様式の中では最も多いものであり、正門に配されることの多い格式の高い門とされる。ちなみに、 門柱と控え柱を合わせると六本の柱となるから要注意。

これをくぐって本殿域へと入ることとなる。

氷占い

表門をくぐったところの両サイドに設置された氷。この氷の上に、白紙の占い用紙を置くと、文字が浮かび上がっているという寸法だ。初穂料200円也。

拝殿・舞殿

拝殿としての機能を併せ持つ、ハイブリッド型の舞殿である。

何を隠そう、この氷室神社は、江戸時代の雅楽伝承のための組織三方楽所さんぼうがくそのひとつであるところの「南方楽人なんぽうがくにんが拠点とした神社。であるがゆえに、神主も楽人が勤めていたとのこと。

ちなみに、三方とは、宮中方・南都方・天王寺方の三団体。

この舞殿は、その楽人による舞楽奉納の舞台であり、表門の東西廊には演奏者が並んだという。

本殿

三間社流造の桧皮葺。文久3年の建築だとか。文久3年と言えば幕末。薩英戦争が勃発した年である。

そして、この本殿には、ある特徴が、、、それは、、、

本殿の床下に、左右2つの室が造られていて、それぞれに板戸が取り付けられているのである。

本殿向かって左側面
本殿向かって右側面(庇あり)

特に、右側面の扉前には桧皮葺の庇が取り付けられている。非常に珍しい。というか、他には無い。

末社:舞光社

本殿向かって右隣に祀られる春日造りの小祠は舞光社むこうしゃ

祭神は、狛光高こまのみつたかの御魂” とのこと。「狛光高とは、平安中期の雅楽家。雅楽・舞曲の達人で、楽人たちの氏神として祀る。」との説明がある。

そして、当社の舞楽面「陵王」は、ここに納められていたとのことだ。

こちら、当然のことながら芸能上達の神であり、昨今では学業向上の神としても信仰を集めている。

最後に

氷室神社の見どころは、他にもある。というか、こちらの方がメインだろう。列記しておこう。

枝垂れ桜

表門の右手前に枝垂れ桜の大木がある。このあたりで一番早く咲くため、「一番桜」と呼ばれることもあるという。

桜の樹勢としては衰えてきているようで、花の数も少なくなってきたとのことで、鑑賞するなら早いに越したことはなさそうだ。

献氷祭

毎年5月1日に行われる「献氷祭」では、高さ1mほどの氷柱が2本奉納されるのだが、その1本の氷の中には鯉が泳ぐ姿で封じ込められていて、もう1本には鯛が封じ込められている。

そもそもの ”春分の日に氷室の氷を宮中に献上する習わし” を継承する、深い歴史を感じさせる神事である。

ひむろしらゆき祭り

こちらはイベント色の強い神事である。

昨今、奈良県下ではかき氷がブームで、たくさんのお店がいろんな工夫を凝らしたかき氷を販売しているのであるが、それらのお店に加えて、他都道府県のお店も参加し、特別バージョンかき氷を食べることが出来るというイベントである。

氷室神社で純度が格段に高い純氷とかき氷の奉納神事が行われたあと、氷室神社から春日野国際フォーラム甍別館まで、純氷道中と命名された行列を仕立てて、奉納された純氷を運び込む。

そして、春日野国際フォーラム甍別館にて、お待ちかねのかき氷を食べる。という趣向だ。

一昨年までは、かき氷の販売も境内で行っていたようだが、昨年は春日野国際フォーラムに場所を変えたらしい。

ちなみに、今年(2020年)は新型コロナウイルスの影響で中止となった。

氷室神社概要

  • 所在地  奈良県奈良市春日野町1-4
  • 電話番号  0742-23-7297
  • 主祭神  闘鶏稲置大山主命・大鷦鷯命・額田大仲彦命
  • 創建年    和銅3年(710年)
  • 社格   式内小社(論社)・村社
  • 公式HP   http://www.himurojinja.jp/

氷室神社のアクセス

MAP

最寄り駅

  • 近鉄奈良線「近鉄奈良駅」 徒歩10分
  • JR大和路線「奈良駅」 徒歩25分

駐車場

  • あり(有料)