大念仏寺|平野|なにわ七幸めぐり「諸芸上達」
大念仏寺は、大阪市平野区上町にある寺院で、融通念仏宗の総本山である。
大阪を代表する七つの社寺仏閣を巡る企画「なにわ七幸めぐり」一つにも数えられる、日本最初の念仏道場だ。
近くには、初代征夷大将軍「坂上田村麻呂」のお孫さんが創建した杭全神社や、太平洋戦争の戦災を免れたため昔ながらの街並みを残す平野郷商店街などがある。合わせての訪問をお勧めする。
大念仏寺について
大念仏寺 概要
- 所在地 大阪市平野区平野上町1丁目7−26
- 電話番号 06-6791-0026
- 山号 諸仏護念院大源山
- 主祭神 十一尊天得如来
- 創建年 1127年
- 社格 河内西国三十三か所(特別客番)・おおさか十三仏霊場10番
- 公式HP http://www.dainenbutsuji.com/
大念仏寺 アクセス
MAP
最寄り駅
- JR大和路線「平野駅」徒歩5分
- 地下鉄谷町線「平野駅」徒歩15分
駐車場
- あり
融通念仏宗とは
平安末期の混乱の時代、比叡山で天台宗を、さらに仁和寺で真言密教を学んだ「良忍」によって開かれた、日本で生まれた最初の宗派である。
教義を簡単に申し上げると、
「常に念仏を唱えることで、極楽往生が叶う」
という宗派である。
しかも、自身の仏性や他人の仏性、そして森羅万象が融通しあって、すべての人々が極楽往生するという
「自他融通」
という考え方を説いたので、「融通念仏宗」と称する。
のちに、法然が浄土宗を、親鸞が浄土真宗を開宗する元となったといわれる。
大念仏寺の歴史
平安末期の1127年。
聖徳太子を深く尊敬していた「良忍上人」が、太子ゆかりの四天王寺を参詣のあと、
「平野こそ念仏を広めるにふさわしい地である」
という夢のお告げを授かり、
平野郷「修楽寺」の別院「香華院」において融通念仏会を催したところ大盛況。
それを伝え聞いた鳥羽上皇が、「ここを念仏勧進の根本道場とする」と勅した。これが総本山大念佛寺の開創とする。
その後、後継者の手によって大念仏宗は発展するが、6世の死去以降は後継者に恵まれず、宗門は一時中断を余儀なくされた。
とはいえ、その間も、教えの根本は他のルートで全国各地に拡散し続けていた。
130年間の中断ののちに、宗門を再興したのは「法明上人」である。念仏共同体として「講」を組織し、大念仏教団の基礎を築いた。
現在地に本拠を構えたのが戦国時代の終わりごろ。
元禄年間には「大通上人」によって、儀礼の整理、新堂の建立、境内の整備を行い、大本山としての威風堂々たる景観を作り上げたという。
融通念仏寺のご本尊とご利益
ご本尊は、「十一尊天得如来」の絵像である。
十一尊天得如来
十一尊天得如来とは融通念仏宗特有呼称で十一の仏様の総称。
阿弥陀如来を中心にして、取り囲むように観世音菩薩、勢至菩薩、光明王菩薩、宝蔵菩薩、徳蔵菩薩、三昧王菩薩、薬上菩薩、虚空蔵菩薩、月光菩薩、日照王菩薩が描かれた絵で表現される。
阿弥陀如来(あみだにょらい)
サンスクリットでは「アミターバ:無限の光を持つ者」あるいは「アミタユース:無限の寿命を持つ者」。よって、無量光仏、無量寿仏とも。
西にある極楽浄土の所有者。よって、「南無阿弥陀仏」を唱えると「極楽浄土」に行ける!という信仰につながるわけだ。
観世音菩薩(かんぜおんぼさつ)
サンスクリットでは「アヴァローキテーシュヴァラ:観察された自在者」で、観自在菩薩と訳す説と、法華経では「アヴァローキタスヴァラ:観察された音」と記載されているため、観世音菩薩と訳す説がある。
大慈大悲の象徴であり、また現世でのご利益を頂けるとされ、全国各地で信仰される人気の菩薩である。
浄土宗では、阿弥陀如来の脇を固める形で、勢至菩薩とともに安置されることが多い。
当寺の「万部おねり」では、その象徴として「蓮台」を持つ。
勢至菩薩(せいしぼさつ)
浄土宗の経典の一つ「観無量寿経」によると、三途(火途・血途・刀途)、迷いと戦いの世界の苦しみから知恵を持って救い、その亡者を仏道に引き入れ、正しい行いをさせる菩薩とされる
阿弥陀三尊では、観世音菩薩とともに脇を固める菩薩として安置されることが多い。
光明王菩薩
菩薩の智慧の象徴。心と身から発する智慧の光で人々を救う菩薩とされる。
琵琶を持った姿で表現されることが多い。万部おねりでも「琵琶」を持つ。
宝蔵菩薩
七種の宝をもち、人々の願いに応じて蔵を開いてその宝を与えるという。よって宝蔵菩薩と称し、大悲の菩薩とされる。
笛を持った姿で表現される。万部おねりでも「横笛」を持つ。
徳蔵菩薩
慈悲深く徳の高い菩薩とされ、人々の求めに応じて、功徳大悲の蔵を開いて救ってくれる。
笙を持つ姿で表現される。万部おねりでも「笙」を持つ。
三昧王菩薩
人々の心の働きを正しい教えに照らし合わせて、安定の境地に導く菩薩。
蓮の入った器と花びらを持つ姿で表現される。万部おねりでは「華鬘」を持つ。
薬上菩薩
良薬をもってして病に苦しむ人々を救済する菩薩。
兄である薬王菩薩と共に、釈迦如来の脇を固める。法隆寺の釈迦三尊像が有名。
薬壺を持つものを基本とするが、玉幡を持つ形式が多い。万部おねりでは「玉幡」を持つ
虚空蔵菩薩
広大な宇宙のような無限の智恵と慈悲を持ち、福徳円満を願う人々にこれを与えてくれる菩薩。
宝剣左手に如意宝珠を持つ。万部おねりでは「腰鼓」を持つ
月光王菩薩
月の光のような清浄でやさしい慈しみの心で煩悩を消す。万部おねりでは「振鼓」を持つ。
日照王菩薩
智慧の光をもって衆生の明暗を照らしだして、仏道に励むよう導く菩薩。
鏡台の前に立つ。万部おねりでは「鞨鼓」を持つ。
万部おねり
「万部おねり」とは、融通大念仏寺最大の行事である。
神社でいうところに例大祭のような位置づけか。
阿弥陀仏の願いであるところの
「その人、寿命が終わる時にあたって、私は極楽浄土から二十五菩薩を従えて、その人を迎えに来るであろう」
を、具体的に表現した儀式と言われている。
「観音様の蓮台に乗り、阿弥陀如来のお導きに従って、生身のまま往生の本懐を遂げるまでの儀式を行いたい。またそれを人々にも見てもらいたい。」
という法明上人によって、1349年3月15日に行われたものが起源という。
大念仏寺 参詣記録
JR大和路線「平野駅」からだと、国道25号線を越えた真南にその山門は位置する。徒歩で5分程度だろうか。
地下鉄谷町線「平野駅」からだと、北へ北へと歩いて15分から20分。
車だと、駐車場の位置が山門の反対側になるため、裏口から入り、墓地の横を通り抜けることになる。
平野にこんな立派な寺院があったとは、、、驚きである。
山門
なかなかシンプルかつスタイリッシュな山門である。
「大源山」の扁額。霊元天皇皇女のご親筆であるからして「勅額」である。
手水舎
右に傾いた手水舎。これは2018年10月に襲来した台風21号による被害。
さらに近くで見ると、、、
柱や梁に焦げた跡が見える。いつの火災だろうか。
円通殿
山門をくぐって、右へ回り込むと、円通殿(観音堂)がある。
元禄6年、大通上人による建立で、正面には伝教大師作と伝わる聖観音立像が安置されている。
「円通殿」と書かれた扁額は大通上人の筆とのこと。
地蔵堂
円通殿の左となりには、1844年、教彌上人によって再建されたという「地蔵堂」がある。
本尊は蓮台にのる等身大の地蔵菩薩だ。
なにわ七幸「諸芸上達」祈願所 経蔵の「良忍上人像」
さらにその左となりには、元禄年間に「大通上人」によって創建された「経蔵」。
開祖「良忍上人像」が安置された台座が回転するようになっている。
これは転法輪を意味しており、お経の功徳が広く世間に広まり渡るようにとの願いがある。
いろんな角度から、いろんな光が差し込んできて、少し恐ろし気な画像となったが恐ろしいことはない。
ここはパワーがあると感ずる。
この「良忍上人像」が、なにわ七幸の祈願所となるようだ。
本堂
大阪府下最大の木像建築物。屋根の反りが美しい。青空が映えるのである。
「諸仏御念院」と記された扁額。
山門の「大源山」と合わせて、「諸仏護念院大源山 大念佛寺」が正式名称のようだ。
神社ではないので、二拝二拍手一拝や天津祝詞を唱えるわけにはいかない。
よくわからないので、「南無阿弥陀仏」を唱えておいた。
では、本殿の右手に回ろう。
龍王殿
境内の北側に、「龍王殿」がある。「縛魯拏天八大龍王」(ばろだてんはちだいりゅうおう)が祀られている。「講」が結成されているようだ。
ここは大念仏宗とは無関係で、修験道に所属するとのこと。
霊明殿
龍王殿の左に「霊明殿」がある。実に立派な建築物。ここだけで独立した寺院もように見えるほどの構えである。
それもそのはず。
良忍上人の念仏勧進を助け、自らも融通念仏宗に深く帰依した鳥羽上皇の神霊を祀る社殿なのだ。鳥羽上皇が崩御あそばされた年、すなわち1156年に創建されたと伝わる。
寛永年間には、家康公を祀るために権現造りに改築。家康公も融通念仏宗に帰依した人物で、大修繕の資金を奉納、勧進の許可も与えたという。
平成20年には大改修が行われ、その際に、融通念仏宗勧進帳の序文をしたためあそばした後小松天皇も合祀された。
さて、本殿前を横切って、手水舎の裏手に回ると、、、
毘沙門堂
1125年(天治2年)に、開祖「良忍上人」によって創建されたと伝わる「毘沙門堂」がある。
ご本尊は、行基作と伝わる毘沙門天像。
両の脇壇には、十六羅漢・閻魔十像が配置されている。
最後までお読み頂き、ありがとうございました!
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