率川神社|大神神社摂社|”奈良市最古の神社”で安産・子育て祈願。

2019年1月13日

率川神社は、奈良市本子守町に鎮座する神社で、奈良市最古の神社とされる。

そして、大和国一ノ宮にして日本最古の神社として名高い三輪「大神神社」の境外摂社であり、延喜式神名帳に記載される式内社である。

「いさがわ」と読む。

正式名称は、率川坐大神御子神社。これは、大神の御子神が鎮まるお社という意味。

そして、この大神こそが「狭井大神」すなわち「三輪に鎮まる大物主大神の荒魂」を指すのである。だから大神神社の摂社なのだ。

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率川神社について

率川神社 概要

  • 所在地   奈良県奈良市本子守町18
  • 電話番号  0742-22-0832
  • 主祭神   媛蹈韛五十鈴姫命・狭井大神・玉櫛姫命
  • 創建年      593年
  • 社格   式内小社・大神神社摂社
  • 公式HP    http://isagawa-jinja.jp/

率川神社 アクセス

MAP

最寄り駅

  • 近鉄奈良線「奈良駅」徒歩7分
  • JR大和路線「奈良駅」徒歩7分

駐車場

  • あり(無料)

率川神社の祭神

率川神社の本殿は南向きに三社並んでいて、中央の社殿には「媛蹈韛五十鈴姫命」、左に「狭井大神」、右に「玉櫛姫命」が祀られている。

中央の御子神「媛蹈韛五十鈴姫命」を、父神「狭井大神」と母神「玉櫛姫命」が守っている構図となっている。

この様子から、「子供の守り神」として信仰を集めてきたという。

媛蹈韛五十鈴姫命(ひめたたらいすずひめのみこと)

日本書紀に登場する女神。古事記では比売多多良伊須気余理比売(ひめたたらいすきよりひめ)

大物主大神の娘。日向から東征し大和で初代天皇として即位する前年に、神武の正妃となった。

神武天皇の崩御のあとに企てられた謀反から、母の機転で息子達を救ったという説話がある。このことからも「子供の守り神」として崇敬を集めているようだ。

ちなみに、神功皇后以外で皇后が主祭神として祀られている神社は極めて稀と思われる。

狭井大神

狭井大神は、狭井神社に祀られている「大物主大神荒魂」とし、主祭神「媛蹈韛五十鈴姫命」の父親としている。

としている、、、というのは、

確かに古事記には「三輪大神が父親」として登場する説話が記述されているが、日本書紀と先代旧事本紀においては、父親として登場するのは「事代主命」であるからだ。

玉櫛姫命

古事記では「勢夜陀多良比売(せやたたらひめ)」。摂津国三嶋溝杙(みぞくひ)の娘で大物主大神(事代主命とも)の妃である。

古事記によると、、、

勢夜陀多良比売は美女として有名だった。

大物主神は丹塗り矢に姿を変え、勢夜陀多良比売が用を足しているところを狙って川の上流から流れていき、陰部(ほと)を突いた。

驚いた勢夜陀多良比売が矢を取って部屋に戻ると、矢は美男子となった。そして結婚。

娘が生まれた。それがこちらの主祭神であるところの「比売多多良伊須気余理比売」(日本書紀では媛蹈鞴五十鈴媛)である。

ちなみに、この玉櫛姫命の出身地「三島」(茨木市五十鈴町)にある「溝咋神社」では、父神として事代主命が祀られている。

率川神社の創建

推古天皇元年(593年)勅命により、大三輪君白堤が春日邑率川に社を建てて「媛蹈韛五十鈴姫命」一柱を創祀したのが始まりとされる。これをもって奈良市最古の神社とする。

元正天皇の御代、藤原不比等によって社殿2棟が増築され、子守神(玉櫛姫命)と狭井神(大物主大神荒魂)が祀られた。

中世以降江戸時代まで春日大社若宮の管轄となっていたようだ。だから社殿も春日造りなのだろう。

明治に入り、大神神社と春日大社との間で「どちらが管轄するか」の論争が起こり、明治10年内務省の通達によって大神神社の摂社と決定した。

率川神社のご利益

子守明神

率川神社は「子守明神」とも称されていた。

前述の通り、両親神が御子神を守る様子から「子供の守り神」であり、また、その御子神も自らの子を謀反から救ったことによる「子育ての神様」でもある。

また、子宝・安産のご利益も頂けるときく。

三枝祭

6月16~18日に行われる「三枝祭」は、大宝律令において国家祭祀として規定された由緒ある霊験あらたかな祭である。

その祭の主旨は「疫病鎮め」。まさに狭井神社を中心に大神神社で行われる「鎮花祭」と同じなのだ。

よって、病気平癒のご利益も頂けるのである。

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率川神社 参拝記録

率川神社は、近鉄奈良駅の西にある交差点「高天」(たかま)から「やすらぎ通り」を南に300mほど進む。東西に通る「三条通り」を横切るとすぐ西側にある。

率川神社境内に無料駐車スペースがあるが、鳥居から入り拝殿前を横切って奥へ入らなければならず、少しく気が引けるのである。

であるからして、私のような小心者は周辺のコインパーキングに駐車するのである。

そうそう、ここから東に入るとすぐに旧市街地「ならまち」が広がっている。昨今、古民家町屋を改造した店舗が増えてきており、なかなかもってオシャレな街になってきた。

コインパーキングに駐車して、気兼ねなく「ならまち」散策を楽しむのがよかろうと思う。

社頭

社号標にも「官幣大社大神神社摂社」と高らかに謳っている。

この通りは良く通ってきた道で、ここに神社が存在することも知ってはいた。

しかし、おおよそ目的地である東大寺・春日大社・奈良公園に近づきつつある立地であるが故に、つまり先を急ぎたくなる立地であるため、素通りしてきた。私にとっては、そのような、ちょっと気になる神社なのである。

拝殿

シンプルで現代的な拝殿である。なぜ現代的と表現したかというと、正面以外はすべてガラス張りだから。

二拝二拍手一拝。天津祝詞を奏上。そして、子供の成長に感謝申し上げる。

すると、マイクロバスがやってきて拝殿前に横付け。中からお年寄りがゾロゾロ降りてきて、拝殿にて参拝するやいなやバスに乗り込み、走り去る。

しばらくすると、また同じマイクロバスがやってきて、同じように、、、どうやら、近くの高齢者施設にいらっしゃる皆さんの初詣デーのようだ。

てんやわんやの三が日を避けて、すこし空いたこの時期に実施される高齢者施設の新年恒例行事と推察した。

おそらくは、孫や曾孫の成長を祈願なさっているのだろう。

本殿

テントで全貌が見えないのが残念でならない。

典型的な春日造りの社殿が三棟。脇障子で繋がっている様式である。

春日造りの千木は、反りの入った刀剣を2本クロスしたようなフォルム。これが棟にちょこんと置かれている。これが実にカッコいいのである。

ちなみに、私が一番カッコいいと思う春日造りの神社は「往馬大社」。春日造檜皮葺きの春日造り神殿がなんと七連。しかも朱塗りではない。こげ茶色と金色。渋すぎる。

大神神社遥拝所・蛙石

これらは拝殿に対面する位置にある。

左の壁が大神神社本社を遥拝する拝所。ご神体「三輪山」を描いた陶板が埋め込まれている。

そばに置かれてあるのが「蛙石」。かえるに似ていることから名づけられた。

「お金がかえる」「幸せがかえる」「若かえる」 「無事かえる」などにつながり縁起が良いとされ、健康回復・旅行安全などを願って この石を撫でることから「撫で蛙」とも呼ばれ、親しまれています。

率川神社HPより

境内社

率川神社本殿の向かって右に、社殿が三社ならんで鎮座している。

中央が摂社の「率川阿波神社」。向かって右が末社「春日社」、左が「住吉社」となっている。

率川阿波神社

この画像では左側の社殿が率川阿波神社。(テントが邪魔なのである。

祭神

祭神は「事代主命」。大国主命の御子にして、三輪氏や賀茂氏の祖神。葛城の中心「鴨都波神社」の主祭神である。

創建

宝亀2年(771年)、藤原是君公の夢に狭井大神の御子神が現れ、「今は阿波国にいるが大和の率川の辺りに住みたい」と。。。よって阿波国から勧請したという。

事代主命が奈良市で祀られた最初の神社ということのようで、奈良市最古の恵比須神社としている。

ご利益

葛城の「鴨都波神社」では田の神として祀られている。すなわちは五穀豊穣。恵比須神と習合したからには、やはり商売繁盛のご利益が頂けるのだろう。

春日社

先ほどの画僧の右側の社殿が春日社。春日大社の管轄となった頃の勧請だろうか。

祭神

祭神は、春日大神。すなわち「武甕槌命」「経津主命」「天児屋根命」「比売神」である。

ご利益

  • 「武甕槌命」「経津主命」は藤原氏の氏神で「武神」の側面が強い。
  • 「天児屋根命」は藤原氏の先祖で「祝詞の神」「出世の神」
  • 「比売神」は、天児屋根命の奥さんで「家内安全」を司る。

住吉社

画像左側の社殿が住吉社。

祭神

住吉大神、すなわち「底筒之男命」「中筒之男命」「表筒之男命」「神功皇后」の4柱。摂津一之宮の住吉大社の祭神と同じである。

ご利益

  • 伊邪那岐命の禊で出現した神であるから「祓いの神」
  • 三韓征伐を先導した神であるがゆえに、「勝負運の神」「航海安全の神」
  • 住吉神がしばしば姿を現して和歌で託宣したから、「和歌の神」
  • 神功皇后懐妊にも関わらず戦に赴き凱旋後無事に出産したため、「安産の神」

などなど、実に多岐にわたるのである。

最後に

以上、率川神社の参拝記録を終わらせていただくが、何故、推古天皇が「媛蹈韛五十鈴姫命」を祀るように命じたのか。しかも、当時は未開の地であったと思われる奈良の北部に。

今となってはわからない。

最後までお読み頂き、ありがとうございました!

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