瀬織津姫命(せおりつひめ)|封印された女神。その正体とは。

2018年4月23日

瀬織津姫命せおりつひめのみことは、神道の大祓詞おおはらえことばにおいて、罪や穢れを祓い清めてくださる「祓戸四神はらえどのししん」の筆頭として登場する女神。

しかし、古事記や日本書紀には登場しない。それは、記紀編纂以来のタブーである「天照大御神は男神だった」の領域に入ってしまうことになるからだろう。

何かと謎めいた女神であり、それがまた人心をくすぐるのである。

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瀬織津姫について

瀬織津姫命の神名

以下、すべて「セオリツヒメ」と読む。

  • 瀬織津比咩
  • 瀬織津比売
  • 瀬織津媛

瀬織津姫命の神格

大祓詞によると、流れの速い瀬に坐し、罪穢れを海に流す祓いの女神であることから、

  • 祓いの神
  • 水の神
  • 滝の神
  • (流れのはやい)川の神
  • 海の神

と言えよう。

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瀬織津姫命の正体

瀬織津姫命は記紀に登場しないので、その素性がはっきりしない。

よくわからない神、しかし大祓詞に登場する重要な神。それが「瀬織津姫命」であり、そうであるがゆえに「その正体とは?」という議論が展開されることになるわけだ。

以下、いくつかの説を上げておこう。

天照大神荒魂説

瀬織津姫命は天照大神の荒魂あらみたまがである” とする説は、

神道五部書と呼ばれる、外宮の神職「渡会氏」によって提唱された「伊勢神道」の経典とも言える5つの書物の中の3書に、次のような記述が見える

倭姫命世紀

皇太神宮荒魂 一名 瀬織津比咩神

伊勢二所皇太神宮御鎮座伝記

天照荒魂 亦名 瀬織津比咩神

天照坐伊勢二所皇太神宮御鎮座次第記

天照荒魂 亦名 瀬織津比咩神

このように、瀬織津姫神は天照大御神の荒魂と位置付けている。

次に、真言密教から見た大祓詞の解説書「中臣祓訓解」によると、

中臣祓訓解

伊弉諾尊所化乃神名。八十柱乃日神是奈理。天照太神乃荒魂於。祭宮那號須。悪事於祓布神也。

このように、瀬織津姫命は祓いの神である八十柱日神やそまがつひのかみであり、かつ、天照大御神の荒魂あらみさきであるとしている。

さらに、皇大神宮の別宮「伊雑宮」の御師である「西岡家伝承の文書」には、

西岡家文書

玉柱屋姫神 天照大神分身在郷 瀬織津姫神 天照大神分身 在河

とある。

中世末期から江戸末期まで、伊雑宮の祭神は「伊佐波登美命」「玉柱屋姫神(玉柱神)」の2座と考えられており、そのうちの玉柱屋姫神は里に座す天照大神の分身で、瀬織津姫は河に座す天照大神の分身と解説するわけだ。

すなわち、天照大神・玉柱屋姫神・瀬織津姫神は同じ神であるというに等しい

また、天照大神荒魂を祀る「廣田神社」の戦前までの由緒書に、

廣田神社の由緒書

玉祭神の天照大神荒魂(撞賢木厳之御魂天疎向津媛命:つきさかきいつのみたまあまさかるむかいつひめのみこと)は瀬織津姫である

と、ズバリ明記されていたらしい。

ここまでをまとめると、

概天照大御神(女神)の荒魂。その亦の名を瀬織津姫命(女神)といい、ときには玉柱屋姫命(女神)という。

ということだ。

しかし、次の説は尋常ではない。

天照大神の妃(正室)説

瀬織津姫は天照大神の妃であったとする説である。

何が尋常ではないのかというと、言うまでもないが、、、天照大神が男神であったことの証となるからだ。

ホツマツタエによると、

伊邪那岐と伊邪那美には4人の子がおり、長女がワカヒメ、長男がアマテラス、次男がツクヨミ、三男がスサノオ。

長男のアマテラスの妃の一人が瀬織津姫である。

としている。そして、

後にアマテラスが瀬織津姫を正妻として「内宮」に迎え入れたので、瀬織津姫は「向津姫」となる

とも。

ホツマツタヱとは、、、

神代文字の一種「ヲシテ文字」で書かれた古史古伝の一つで、天地開闢から景行天皇までを五七調の長歌体で綴る叙事詩である。

東京神田の古本屋で写本が再発見されたのが昭和41年。そして、その存在は江戸中期までしか遡ることができない。

というわけで、偽書であるとの評価であるが、一方で記紀の原典となった真書であるとする研究者も増えてきている。

偽書であるとされているが、これが真書であったならば、、、を考えると、偽書にしておかなければならないのである。

天照大神は女神ではなく男神だった、ということの証となるからだ。そして記紀がそれを隠したという事実が明るみに出る。しかも、、、

瀬織津姫を史実から抹殺するだけでなく、男の天照大神まで封印してしまったことになろう。

何故、そうまでして、天照大御神が女神でなければならなかったのだろう。それは、、、

時の天皇である「持統天皇(女帝)」の正当性を担保するためであるという見方が一般的なようだ。

さらに、瀬織津姫と同時に封印された「男神の天照大神」がすなわち「饒速日尊」なのだと歴史家はいう。となれば、神武天皇の正当性まで疑われてしまうわけだ。

その他の説

ほかにも、様々な説がある。

瀬織津姫命が3分割されて宗像三神となった。

瀬織津姫命は菊理媛神、水波能売命、市杵島姫命、弁財天である。

大山祇神が瀬織津姫命で、その娘である木花咲耶姫命と磐長姫命は瀬織津姫の2面性を表す。

あげればキリがない。

これらの説は、饒速日尊を祀る神社が祭神の変更を余儀なくされたように、瀬織津姫命を祀る神社が、上記の祭神名に変更させられたという側面もあるのだろう。

いずれにしても、記紀においての素性が不明であるがゆえに、そして、重要な神のような印象があるがゆえに、さまざまな説が飛び交うのである。

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神様紹介

Posted by リョウ