葛木御歳神社|名神大社|女性宮司さんの奮闘で復活した農耕の神。

2017年11月28日

葛木御歳神社は、奈良県御所市東持田の御歳山(神体山)の山麓に鎮座する、延喜式神名帳に記載されている式内社で、その中でも名神大社に列した、霊験あらたかな神社である。

葛上郡に6社ある名神大社の中においても、従一位を賜る殊のほか格式高い神社だ。

主祭神の御歳神は、主に農耕に神力を発揮するとされているが、こちらの大社は水害の度に奉幣された記録もあり、風雨を司る神としても神力兼ね備えている。

この御歳神社は「中鴨社」とも称され、上鴨社(高鴨神社)下鴨社(鴨都波神社)とともに、全国の賀茂社・加茂社の総本社とされるとともに、全国の御歳神社の本社とも。

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葛木御歳神社について

葛木御歳神社 概要

  • 所在地     奈良県御所市東持田269
  • 電話番号         0745-66-1708
  • 主祭神    御歳神 相殿 大年神・高照姫命
  • 創建年           不詳
  • 社格        式内名神大社・郷社
  • 公式HP    http://mitoshijinja.jp

葛木御歳神社 アクセス

MAP

最寄り駅

  • 近鉄御所線 御所駅 御所駅から小殿バス停下車徒歩10分

駐車場

  • あり

葛木御歳神社の祭神

祭神は、御歳神、大年神、高照姫命である

御歳神(みとしのかみ)

古事記によると、須佐之男命の孫である。父は大年神で母は香用比売。

御歳は御稔(みとし)の意味で、稲の神、五穀豊穣をもたらす神として古くから尊崇されているが、父の大年神、子の若年神も同様の神格を持ち、この親子三代の神々セットで年神様と呼ばれ、正月に各家庭にやってくるのである。

大年神(おおとしのかみ)

古事記によると、須佐之男命の子で宇迦之御魂神は同母の妹である。兄妹とも食物の神・五穀豊穣の神ということになる。一説には饒速日尊と同一神ともいわれる。

高照姫命

大国主命の娘で八重事代主神の同母の妹である。

葛木御歳神社の創建・歴史

創建年代はさだかではない。中鴨社と呼ばれることから、鴨一族が奉祀する神社であることがわかる。

おそらくは、稲作技術の発展に伴う人口増を背景に、上鴨社である高鴨神社付近の狭い地域から、広い金剛山麓の扇状地帯に移住した一派が、三輪山のような形状をした山をご神体山(御歳山と呼ぶ)として磐座を設けて祭祀を行ったのが始まりであろうと想像する。

創建当初から御歳神を祀っていたかどうかも定かではなく、諸説あるようだが、この場所から田畑を望むにつけて、稲の神・五穀豊穣の神「御歳神」を祀ることに何ら疑問を挟む余地はないのである。

さて、古代において朝廷が執り行っていた祈年祭(五穀豊穣を祈る神事)では、この御歳神社にのみ白猪・白馬・白鶏が献じられたという。特別な神社だ。

その由来は「古語拾遺」に次のように記されている。

「神代、大地主神が田を作る日に、農夫に牛の肉をご馳走した。
その事に怒った御歳神は田にいなごを放ち苗の葉を喰い枯らしてしまった。
そこで大地主神は、白猪・白馬・白鶏を献上して謝したところ、そのお怒りが解けたばかりでなく、御歳神は「麻柄で糸巻きを作り、麻の葉で掃い、天押草で押し、烏扇であおぎなさい。
それでも出て行かなければ、牛の肉を溝口に置き、男茎形を作ってこれに加え、(これは男性の印を意味し、その神の怒りを鎮め、陰陽の和合を称えたものである。)ジュズダマ・キハジカミ・クルミの葉と塩を畔に置きなさい」と教えてくださったので、その通りにすれば苗の葉がまた茂って豊作になった。

葛木御歳神社HPより引用

血の匂いがするではないか。

葛木御歳神社のご利益

当然のことながら、五穀豊穣である。農業に従事される方々の信仰を集めてやまない。

次に、また「トシ」は年に一度の収穫を基準とした時の単位であることからして、事を始める時に祈ると良いとされる。

柳田邦夫氏によると、一年を守護する神、農作を守護する田の神、家を守護する祖霊の3つを一つの神として信仰した素朴な民間神が年神であるとしている。

これらのことから、ご利益は、、、

  • 五穀豊穣
  • 家内安全
  • 万物育成の神
  • 新規事業の神
  • 起死回生・・・これは後述する。

あたりだろうか。

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葛木御歳神社 参拝記録

御所市街から国道24号線を南下する。この国道24号線はかつて下街道と呼ばれた古道らしい。大和から紀州へ抜ける最短コースの古道で、かなりの交通量があったときく。

24号線の小殿北交差点を左折(東行)し突き当りまで進む。突き当りを右折しすぐ左折するとあとは直進。

鳥居の横をすり抜けると参道に入る。参道の突き当り右手に数台の駐車場がある。

その向かいには「サロン&カフェ みのりの森」という喫茶店。なんとこの喫茶店は、御歳神社の宮司さんが経営されているとのこと。

地下水をくみ上げて竹筒を通して供給するタイプ。趣がある。さすがは女性の宮司さんだ。

まずは、手口を漱ごう。

社頭の様子

11月も終盤に入ろうかという頃。紅葉が綺麗に色づき始めていた。

古めかしい石製の鳥居と紅葉の具合がちょうどいい。少し崩れかかった階段も味がある。

さて、ちょど私と同じタイミングで、山伏の装束に身を包んだ男性がこの階段を上がっていった。

あとでわかったのだが、この日はご神体山への拝登の日だったらしく、あの山伏さんはその先導役の方だったようだ。

御歳神社 拝殿

階段を上り切ると正面に拝殿がある。先ほどまでと全く雰囲気が異なる。画像を御覧頂いてもその違いがわかると思う。

実に厳めしい空気が漂っている。そして切れ味鋭い刃物のような。

石切劔箭神社の上之社に近しいものがあると感じた。あちらの祭神は「饒速日尊」であった。

御歳神社 本殿

なんと、この本殿は春日大社の本殿第一殿を移築したものらしい。本殿第一殿といえば、武甕槌命を祀っている神殿である。千木などは春日大社のものではないようだが、、、

それにしても春日大社から譲り受けるとは、宮司さんのお力であろう。素晴らしい。

拝殿の裏側に回り込めるので、近くで見学することが可能である。その是非は問うまい。

境内社

拝殿右手の境内社

手前から、

事代主命神社

元々は、葛城賀茂氏の祀る田の神。記紀によって出雲の神とされ託宣の神となる。宮中における八神の一柱に列する大神である。後世、恵比寿神と習合して商売繁盛の神となった。

天稚彦命神社

国津神の大国主命に対して天津神に国を譲るよう説得するために派遣された神。ところが大国主命の娘である下照姫命と結婚して大国主命の跡継ぎを狙った。そこからいろいろとあって、高御産巣日神によって殺されてしまう。

稚日女命神社

古事記によると、須佐之男命が河を剥いだ馬を織屋に投げ込んだ時、驚いて機から落ち、持っていた梭(ひ)で身体を傷つけて亡くなったとされる。

天照大御神の幼名であると言う説、妹であると言う説、御子であると言う説など様々だ。

ホツマツタエによると、稚日女は思兼神と結婚して下照姫と名を変え、瀬織津姫の御子である天忍穂耳尊を養育。神上がった後、歳徳神とあがめられたとする。

一言主命神社

事代主神と並んで賀茂氏が祀る神。一言の願いであれば何でも聞き届ける神として信仰されている。

神名が似ていることから事代主神と同一神とする向きもある。また続日本書紀には高鴨神と記載されているため、高鴨神社の主祭神である味耜高彦根神と同一神とも。

もしかしたら、事代主神・一言主神・味耜高彦根神はすべて同一神なのかもしれない。いずれも葛城賀茂氏が祀る神であるからして。。。

葛木一言主神社が全国の一言主神社の本社となる。

本殿左手の境内社群

手前から、、、

天照皇大神社

言わずと知れた、伊勢の神宮に祀られる日本の総氏神であり、皇室の祖神である。

高皇産霊命神社

造化三神のうちの一柱。様々な重要な案件において、天照大御神に代わって決定し実行する神。

神皇産霊命神社

造化三神のうちの一柱。一度は死んだ大国主命を蘇生させるために神を派遣するなど、母性を感じさせる神である。本来は性別の無い神なのだが。。。

味耜高彦根神社

鴨族発祥の地に鎮座する高鴨神社の主祭神。迦毛大御神(かものおおみかみ)とも称される、まさに大神である。

古事記において大御神と称される神は、天照大御神と迦毛大御神のみ。これは当時の賀茂氏の勢力が朝廷に並ぶほどに大きかったということであろうと、私は思うのである。

遥拝所

こちらの遥拝所はどこを遥拝するものなのか。角度から判断するに、伊勢の神宮だろうか。

英霊殿

ここだけが、薄暗く湿った空気感。近寄りたくない感覚に襲われる。

最後に

参拝後に知ったことなのだが、こちらの女性の宮司さんはそもそも神社の生まれでもなく、こちらの神社とも特に親類関係にあったわけもないらしい。

当時、心身ともに追い詰められていた宮司さんはなぜか、それまでまったく心に留めたこともなかった神社へ吸い寄せられるように向かったらしい。

初めて御歳神社を訪れた時、ここはかなり荒れていたらしいのだが、なぜか惹き付けられてしまい、一念発起して神職の資格をとり、この神社の宮司になってしまったらしいのだ。

荒れた境内を改築するため、クラウドファンディングを活用したり、ボランティア募集をネットで呼びかけたり。かなりの苦労をされたようだ。

その甲斐あって、今日、素晴らしい雰囲気の神域に蘇っただけでなく、地域の方々や葛城の里を訪れる方々の憩いの場「サロン&カフェ みのりの森」を経営。

そこで日本神道を広く啓蒙するための各種の催しを行うなど、バイタリティあふれる女性である。

私とほぼ同い年。見習うべき人である。

という具合で、起死回生のご利益がありそうな気がするのだ。

最後までお読み頂き、ありがとうございます。

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