鹿屋野比売神・草祖草野姫・野椎神・野槌
鹿屋野比売神は、日本の神話に登場する神である。
「鹿屋」は茅葺屋根に使われる「茅」あるいは「萱」のこと。
茅は稲やススキと同じイネ科の植物なのだが、ワラやススキと違って油分を多く含むため、水をはじくという性質を持つ。
よって、古代の家屋において茅は欠かせない、非常に有用な植物だった。
そんな、有用で繁殖力の旺盛な「茅」が生い茂る「野原」を司る神として生まれたのが「鹿屋野比売神」である。
鹿屋野比売神の概要
鹿屋野比売神の神名
- 鹿屋野比売神(かやのひめのかみ)>>>古事記
- 野椎神(のづちのかみ)>>>古事記における別名
- 草祖草野姫(くさのおやかやのひめ)>>>日本書紀
- 野槌(のづち)>>>日本書紀における別名。
「のづち」は「野津持」(のつもち)。野の全てを司る神という意味。
一方、妖怪の類の「ノツチ」が存在する。野津霊(のつち)=野の精霊。
体長1m・太さ15cmの、目鼻はなく口だけがある太短い蛇のような外見であると伝わる。
記紀では、カヤノヒメの別名と定義されているようだが。。。
鹿屋野比売神の神格
- 屋根の神(これが本来の神格)
- 草の神(発展形の神格)
- 生命の神(茅の繁殖力を神格化)
いくつかの神社では、次のような神格を提示する。
- 灌漑用水の神
- 漬物の神
- タバコの神
灌漑用水の神とは?
三重県伊勢市、豊受大神宮(外宮)の摂社に「清野井庭神社」がある。祭神は草野姫命で、灌漑用水の神として祀られているという。
これすなわち、農耕神であろう。
漬物の神とは?
愛知県あま市にある古社「萱津神社」では、漬物の神として祀られ、「香乃物祭」なるものが存在するという。
この土地の人々が神前に瓜・蓼・茄子などの野菜と、海からとれた塩も供えて、五穀豊穣を祈願した。
しかし、野菜類が腐ってしまうのをもったいないと思い、野菜と塩を甕に入れて供えるようにしたところ、野菜が腐るどころか美味しい漬物になった。
人々はこれを神様からの贈り物と信じ、万病を癒すお守りにしたという。
神社HP由緒より引用
漬物は、お新香とも呼ばれ、上品な料理屋では「香の物」と記載されたりする。もともとは「神の物」だったのだ。
タバコの神とは?
茨城県にある加波山神社の末社に「たばこ神社」があり、草野姫命が主祭神として祀られている。
そもそも鹿屋野比売神は、野に茂る植物全般を司る神。よってタバコにも宿っていよう。
全国に20数社のたばこ神社が存在するようだが、祭神は宇迦之御魂神だったり菅原道真公だったりする。
鹿屋野比売神のご利益
- 厄払い(大祓の茅の輪)
- 五穀豊穣(タバコ葉含む)
- 家屋守護
茅の輪(ちのわ)
6月30日の「夏越大祓」や12月31日の「大祓」の際、拝殿前に設置される「茅の輪」。
これをくぐることによって、罪やけがれを取り除くことができるされる。
そもそもは、素戔嗚尊が蘇民将来に「もし悪い病気が流行することがあったら、茅で輪を作って、腰につけていれば病気にかからないですむだろう」 と教えた「疫病除け」の御守りである。
鹿屋野比売神の系譜
- 父>>>伊邪那岐命
- 母>>>伊邪那美命
- 夫>>>大山津見神
- 子>>>天之狭土神・国之狭土神
天之狭霧神・国之狭霧神
天之闇戸神・国之闇戸神
大戸惑子神・大戸惑女神
- 子>>>天之狭土神・国之狭土神
鹿屋野比売神が登場する神話
古事記より
神生み(誕生)
伊邪那岐命と伊邪那美命の神生みにおいて、家宅六神・海・水戸・海と河の神々が生まれたあと、、、
次に風の神、志那都比古神を生み、次に木の神、久久能智神を生み、次に山の神、大山津見神を生み、次に野の神、鹿屋野比売神を生んだ。亦の名は野椎神という。
日本書紀
神生み
伊邪那岐尊と伊弉冉尊は、淡嶋と蛭子を生んだあと。。。
次に海を生み、次に山を生んだ。そして木の神ククノチを生んだ。次に草の神カヤノヒメを生んだ。またの名をノヅチという。
岩戸隠れ
日本書紀第七段の一書の(二)に登場する。
素戔鳴尊の悪行にも日神尊(天照大御神)は寛容な態度をとっていたのだが、新嘗祭のときのこと、、、
素戔鳴尊が日神尊の座る場所に糞を置いた。それに気づかず日神尊が着席し糞まみれになってしまった。(穢れたということか)
これには堪忍袋の緒が切れて、天石窟(アメノイワヤ)に籠ってしまった。
神々はこれを心配し、天糠戸に鏡を作らせ、太玉に幣を作らせ、豊玉に玉を作らせた。
そして、、、
山の雷神に沢山の玉を飾り付けた榊を作らせ、野槌に沢山の玉で飾りつけした笹を作らせた。
鹿屋野比売神を祀る神社(当ブログ内)
主祭神として祀る神社ではないが、、、
深草神社 (和歌山市「日前神宮・国懸神宮」の末社)
こちらでは、腫物封じの神として祀られている。
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