祓戸大神|はらえどのおおかみ|神道の真髄「祓い」を司る神々

2019年5月31日

祓戸大神(はらえどのおおかみ)は、日本神道における「祓い」を司る神々の総称である。

「祓い」は神道の真髄である。とすれば、それを司る祓戸大神は神道における中核となる神々であると言えよう。

祓戸大神を構成する神々

祓戸大神という神名は、記紀には登場せず「祝詞(のりと)」の中に登場する。

「祓詞」に登場する祓戸大神

「祓詞」は、神事の冒頭で奏上される、いわば挨拶のような祝詞である。

掛けまくも畏き 伊邪那岐大神 筑紫の日向の橘の小戸の阿波岐原に 禊ぎ祓へ給ひし時に 生り坐せる祓戸の大神等 諸々の禍事・罪・穢 有らむをば 祓へ給ひ清め給へと 白すことを聞こし召せと 恐み恐みも白す。

かけまくもかしこき  いざなぎのおほかみ  つくしのひむかのたちばなノをどのあはぎはらに  みそぎはらへたまひしときになりませる  はらへどのおほかみたち  もろもろのまがことつみけがれあらむをば  はらへたまひきよめたまへとまをすことを  きこしめせとかしこみかしこみもまをす」

祓詞によると、「祓戸大神とは、筑紫の日向の橘の小戸の阿波岐原という場所で、伊邪那岐大神が海水を浴びて禊を行ったときに現われた神々である」と解釈できる。

というわけで、その禊で成った神々をあげると次の通りである。

衣服を脱いだときに成った神々
  • 杖・・・衝立船戸神(つきたつふなとのかみ)
  • 帯・・・道之長乳歯神(みちのながちはのかみ)
  • 袋・・・時量師神(ときはかしのかみ)
  • 衣・・・和豆良比能宇斯能神(わづらひのうしのかみ)
  • 袴・・・道俣神(ちまたのかみ)
  • 冠・・・飽咋之宇斯能神(あきぐひのうしのかみ)
  • 左腕輪・・・奥疎神(おきざかるのかみ)
  • 左腕輪・・・奥津那芸佐毘古神(おくつなぎさびこのかみ)
  • 左腕輪・・・奥津甲斐弁羅神(おきつかひべらのかみ)
  • 右腕輪・・・辺疎神(へざかるのかみ)
  • 右腕輪・・・辺津那芸佐毘古神(へつなぎさびこのかみ)
  • 右腕輪・・・辺津甲斐弁羅神(へつかひべらのかみ)
潮流の中流で清めたとき、黄泉の国の穢れから成った神々
  • 八十禍津日神(やそまがつひのかみ)
  • 大禍津日神(おほまがつひのかみ)
その禍(まが)を直すために成った神々
  • 神直毘神(かむなおびのかみ)
  • 大直毘神(おほなおびのかみ)
  • 伊豆能売(いづのめ)
潮流の底で清めたときに成った神々
潮流の中ほどで清めたときに成った神々
潮流の表面で清めたときに成った神々

最後に顔を洗ったときに成った神々(三貴子)

なんと、26柱も成っている。

しかしこのうち、禍津日二神、直毘神二神、綿津見三神(少童命三神)、筒之男三神(住吉三神)、三貴子の合計13柱は、祓戸大神から除外されるというのが一般的な見解のようだ。

大祓詞における祓戸大神

大祓詞(おおはらえことば)とは、6月末と12月末に行われる大祓の神事で奏上される祝詞である。

長いので原文は割愛させていただくが、その中に次のような記述がある。

高山の末 短山の末より 佐久那太理に落ち多岐つ 速川の瀬に坐す瀬織津比賣と言ふ神 大海原に持ち出でなむ 此く持ち出で往なば 荒潮の潮の八百道の八潮道の潮の八百會に坐 す速開都比賣と言ふ神 持ち加加呑みてむ 此く加加呑みてば 気吹戸に坐す気吹戸主と言ふ神 根底國に気吹き放ちてむ 此く気吹き放ちてば 根國 底國に坐す速佐須良比賣と言ふ神 持ち佐須良ひ失ひてむ 此く佐須良ひ失ひてば 罪と言ふ罪は在らじと 祓へ給ひ清め給ふ事を 天つ神 國つ神 八百萬神等共に 聞こし食せと白す

整理すると、

  • 瀬織津比売(せおりつひめ)・・・ 諸々の禍事・罪・穢れを川から海へ流す
  • 速開都比売(はやあきつひめ) ・・・海の底で待ち構えていて諸々の禍事・罪・穢れを飲み込む
  • 気吹戸主(いぶきどぬし) ・・・諸々の禍事・罪・穢れを飲み込んだのを確認して根の国・底の国に息吹を放つ
  • 速佐須良比売(はやさすらひめ) ・・・根の国・底の国に持ち込まれた諸々の禍事・罪・穢れをさすらって失う
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という具合に、まさに祓戸大神たちによって罪や穢れが処理されていく過程が具体的に解説されている。

祓詞と照らし合わせた時、祓戸大神とは、この4柱の神々のことであると解釈することが出来る。

となれば、記紀に登場しないこの祓戸四神を、伊邪那岐の禊で現れた神々に当てる試みがなされるわけだ。

祓戸四神の正体

『倭姫命世紀』『中臣祓訓解』『中臣祓注抄』などの文献から、本居宣長が出した結論とは、

  • 瀬織津比売・・・八十禍津日神
  • 速開都比売・・・伊豆能売
  • 気吹戸主・・・神直日神
  • 速佐須良比売・・・根の国に居る須勢理毘売命

速開都比売は、古事記に登場する水戸の神「速秋津比売」でもある。

須勢理毘売命は、禊で成った神ではないが、禊で成った速須佐之男命の娘である。一説には速佐須良比売は素戔嗚尊の分身であるとも。。。