赤留比売命・阿加流比売神・比売許曽神|新羅からやってきた美女。
阿加流比売神は記紀等に登場する女神で、朝鮮半島の新羅からやってきたとされる。
比売許曽社、比売語曽社、比売碁曽社などに祀られることを基本とすると思われるが、代わりに下照比売命が祀られるケースがある。
阿加流比売神の概要
神名
- 阿加流比売神>>>古事記
- 比売許曽社の神>>>日本書紀
- 赤留比売命>>>赤留比売命神社伝
- 阿迦留姫命>>>姫嶋神社伝
神格
- 復活の神
- 決断の神
- 行動の神
ご利益
- 再起復活
- 女性の開運招福
- 女性の心願成就
- 美人祈願
阿加流比売神が登場する神話
古事記・日本書紀に登場する。また摂津国風土記の逸文にも登場する。
古事記
古事記の応神天皇記によると、、、
昔々、新羅国に阿具沼という沼があった。この沼のほとりで一人の身分の低い女性が昼寝をしていたときのこと、太陽の光が差し込んで、この女性の陰部を明るく照らした。
すると、女性はたちまち身籠り、そしてすぐさま赤い玉を産んだ。
この一部始終を見ていた身分の低い男は、その赤い玉が欲しいといい、女性から受け取った。
このような、女性が太陽の光を浴びて妊娠する神話(日光感精神話)は各地に存在する。
この男が、牛の背中に農村の人々に食べさせる食料を積んで谷間の畑に向かっていたとき、天日矛に呼び止められる。
天日矛が、「おまえは、その牛を殺して食べるのだろう」と問う。
男は、「滅相もない。食料を運んでんいるだけです。」
弁明するも許してもらえず、仕方なく、腰につけていた赤い玉を天日矛に渡して許しを請うた。
当時の新羅の慣習がわからないので、なんとも言い難いが、現代の感覚でいうと「難癖をつけられた」ようなもの。天日矛とはなんと悪いヤツなんだろう。。。
天日矛は男を許し、その玉を持ち帰り寝室に置いた。そうするとその玉が実に麗しい娘になった。
天日矛はその娘を妻とした。妻はいつも様々な珍味を料理して夫に食べさせていた。
しかし、国王の子は驕り、その妻を激しく罵るので、とうとう妻は「私はあなたの妻になるべき女ではありません。祖国に帰ります。」と言って、すぐに小舟に乗って逃げ出した。
どうも、新羅の天日矛は古事記の作者に嫌われているようだ。
娘は、難波にたどりついた。天日矛も難波までやってきたが、渡し神が行く手を阻んで、ついぞ天日矛を難波に入れなかったという。
この娘こそが、難波の比売碁曽の社に鎮まる阿加流比売という神である。
日本書紀
日本書紀の垂仁天皇紀によると、、、
都怒我阿羅斯等(つぬがあらしと)という男がいたとき、黄色い牛に農機具を積んで田舎道を歩いていた。
すると黄色い牛がいなくなったので、足跡を探して辿っていくと、足跡は役所の中に続いているのを見つけた。
また牛である。
すると役所の前に老人がいて、男に言った。
「役人たちは、黄色い牛が農機具を背負っているのを見て、『この牛は殺して食べてもいい牛だ』と言って食べてしもうた。そして、『牛の持ち主には何か物で弁償すればよい』と言っておったぞ。もし欲しいものを訪ねられたら、村で祀る神を所望するがよい」
しばらくして役人がやってきて「牛の代わりに何が欲しいか?」といったので、老人の言う通り「村で祀る神が欲しい」と答えた。
この村で祀る神は「白い石」だった。これをもらって帰った。
こちらの牛は殺されてしまったようだ。
都怒我阿羅斯等(つぬがあらしと)はこの白い石を寝室に置いた。すると、白い石は美しい乙女になった。
喜んだ男は、さっそくこの乙女と交わろう、近寄った。すると忽然と消えていなくなってしまった。
「乙女よ、どこに行った~!」
阿羅斯等は見えない乙女に、こう問いかけた。
すると「東の方に行きました~!」と、見えない乙女が答えた。
行先など答えなくてもいいのに、、、と思うのは私だけであろうか。
すぐに追いかけて、海を渡り、とうとう日本に辿り着いた。
乙女は難波にいて「比売語曽社」の神となった。または豊国々前郡で「比売語曽社」の神となった。二か所で祀られたという。
摂津国風土記 逸文 比売島の松原
古くは応神天皇の御代。新羅に女神がいた。
その女神は夫から逃れて日本にやってきて、しばらく筑紫の国の伊波比の比売島に住んでいた。
しかし「この島は彼の地から遠くはない。ここにいれば夫に見つかってしまうだろう。」と言って、その島から遷り、とうとう難波の島にたどり着いた。
そして、かつて住んでいた島の名をとって、この島の名としたという。
大分県の北東部に「姫島」がある。そしてそこに「比売語曽神社」が鎮座する。
大阪市西淀川区にも「姫島」という地名がある。そしてそこに「姫嶋神社」があり、もちろん祭神は阿加流比売命である。
阿加流比売神をまつる神社 当ブログ内
姫嶋神社 (大阪市西淀川区)
比売島伝承の地に鎮座する姫嶋神社は、「やりなおし神社」とも称される。主祭神は阿迦留比売命。「はじまりの碑祈願」や「やりなおし祈祷」など、再出発をご利益とする神社だ。変わった御朱印も人気。
赤留比売命神社 (大阪市平野区)
その名もズバリ、赤留比売命神社。平野郷環濠の土塁跡に鎮座する。
比売許曽神社 (大阪市東成区)
延喜式神名帳で名神大社となっている比売許曽神社の論社。祭神は下照比売命で阿加流比売神と同一ともされる。
高津宮 摂社 比売語曽社 (大阪市中央区)
仁徳天皇を祀る高津宮がこの地に遷座されるまで、ここには比売古曽神社が地主神として鎮座していたという。
こちらも延喜式神名帳で名神大社となっている比売許曽神社の論社だ。
祭神は下照比売命。阿加流比売神とも。
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