市杵嶋姫命(いちきしまひめ)|海の女神から財福の女神に転身した絶世の美女
市杵嶋比売命は、日本神話に登場する女神「宗像三女神」の一人である。
そもそもは、朝鮮半島と日本を結ぶ海路を守護する海の神として、朝廷からも信仰されてきたが、神仏習合思想によって「弁財天」と習合してからは、財福の神・芸能の神・美容の神として祀られるようになった。
全国の神社に数多く勧請されている。
市杵嶋姫の概要
市杵嶋姫命の神名
- 市寸島比売神>>>古事記
- 狭依毘売命>>>古事記
- 市杵嶋姫命>>>日本書紀
- 瀛津嶋姫>>>日本書紀
市杵嶋姫命の神格
- 水の神
- 海の神
- 祓いの神(瀬織津姫の亦の名として)
- 子守の神(天孫ニニギ命の養育係であったとする伝承あり)
- 財宝の神(弁財天習合による)
- 芸事の神(弁財天習合による)
市杵嶋姫命の神徳
- 厄除開運
- 航海安全
- 商売繁盛
- 金運上昇
- 芸事上達
市杵嶋姫命の系譜
- 父>>>建速須佐之男命
- 姉>>> 多紀理毘売命 (沖津宮の祭神)
- 妹>>>多岐都比売命 (辺津宮の祭神)
- 夫>>>大山咋神(松尾大社伝)、天火明命(籠神社伝)
瀬織津姫命と同一神とする伝承もある。そして、瀬織津姫命は天照大神の妃とする伝承もある。
天火明命(天照国照天火明)の妃が市杵嶋姫命であり、天照大神の妃が瀬織津姫命。
とすると、天火明命が天照大神と言えないこともなくなるのである。
さて、三女神の生まれた順番と、宗像大社で祀られる場所については諸説あり、現在の宗像大社では日本書紀本文の説を採用し、
- 沖津宮 – 田心姫神(たごりひめ)
- 中津宮 – 湍津姫神(たぎつひめ)
- 辺津宮 – 市杵島姫神(いちきしまひめ)
としている。
弁財天との習合
女神「サラスヴァティー」
起源は、ヒンドゥー教の「サラスヴァティー」という女神。芸術・学問などの知を司る神であり、水と豊穣の神でもある。そして、やはり絶世の美女なのだ。
これが、仏教に取り入れられて「弁財天」と称する守護神となり、インド、中国を経て日本にやってくる。
弁財天と吉祥天の習合
日本では、幸福・美・富を顕す神である吉祥天が習合され、その功徳も弁財天に吸収された。
そしてこの吉祥天も美女なのである。
弁財天と市杵嶋姫命の神仏習合
日本において、仏教の仏と神道の神は、本地垂迹の思想の中で習合していく。
そして、芸術・学問・水に加えて幸福・美・富も司るようになった弁財天は、市杵嶋姫命の本地仏と定義された。
おそらくは、「水の神で絶世の美女」がキーワードとなったのだろう。
したがって、市杵嶋姫命は、そもそもの「水の神・海運守護の神」といったご神徳に、「芸術・学問・幸福・美容・富」が加わった、強力な女神となったのである。
神仏分離
明治維新後に神仏分離政策が施行されたとき、全国の神社に祀られていた弁財天は市杵嶋姫命に祭神変更していったと聞く。
ディスカッション
コメント一覧
まだ、コメントがありません