甕速日(みかはやひ)|樋速日(ひはやひ)
甕速日神(みかはやひ)と樋速日神(ひはやひ)は、日本神話に登場する神である。
加具土命が伊邪那岐命に斬り殺されたときに使われた「天之尾羽張神」という十握剣の、根元から飛び散った加具土命の血が岩に走り付き、そこから現れた三柱の神のうちの二柱。
もう一柱は?というと、かの有名な建御雷之男神(たけみかづちのお)である。
イワサク・ネサクの記事でも述べたように、神剣から生まれた神々であることから、刀剣の神であるという側面と、農耕に係る神々であるという側面の両面から見る必要があるであろう。
甕速日神(みかはやひ)の神名
甕速日神(みかはやひ)の神名
古事記、日本書記とも、甕速日の字を充てている。
- 甕(みか)=甕(かめ)
- 速(はや)=強調語
- 日(ひ)=神霊
甕の神霊という意味の名ということになる。
甕速日神(みかはやひ)の神格
- 土器の神
- 農耕の神
- 刀剣の神
- 製鉄の神
上記の神名の由来から判断されることになるわけだが、甕(かめ)は、古代においてどのような使われ方をしていたのだろう。
水を貯める、穀物を貯蔵する、米を炊く、食物を煮るなどに使われていたようだ。
土器は土と火によって作られる。
刀の製造にも水は使われるだろうが、ここでは農耕の神と見るほうが自然だと思われるのだが、、、
樋速日神(ひはやひ)の神名
- 樋速日(ひのはやひ)>>>古事記
- 熯速日(ひのはやひ)>>>日本書紀
樋速日の場合は、
- 樋(ひ)=樋(とい)
- 速(はや)=強調語
- 日(ひ)=神霊
熯速日の場合は、
- 熯(ひ)=焙る・乾かす
- 速(はや)=強調語
- 日(ひ)=神霊
乾かして火で焼く「土器」を神格化したものと想像できる。
樋速日神(ひはやひ)の神格
- 樋(とい)の神
- 土器の神
- 農耕の神
- 刀剣の神
- 製鉄の神
「水路をつかさどる神」あるいは「土器の神」が神名の意味となれば、「農耕の神」と考えるのが自然である。
が、しか~し!
がしかしである。実は、甕と樋が古代の製鉄方法において、とても重要な役割を担っていたか可能性があるのだ。
- 鉄分を含む風化した花崗岩を「石鎚」で砕く。
- それを、「水路」に流す。
- 流されていく過程で、土砂は破砕されながら、比重の違いによって砂と鉄とに分離される。
- 水路の底に、比重の重い「鉄」が沈殿する。
- さらに、水路の下流に設えた「池」に流れ込む。
- 複数の池を段階的に流していく。
- この池でも比重の差により、砂と鉄が分離される。
- 純度の高い鉄が採取できる。
- 採取した砂鉄を炉の中で焼く。
- 鉄が流れ出しさらに純度の高い鉄が精錬される。
どうだろう。
この「水路」が「樋」なのかもしれないし、「甕」が「池」の役割をしていたのかもしれない。「炉の中で焼く」行為が「熯」なのかも。
となると、俄然、「製鉄の神」あるいは「刀剣の神」の側面がクローズアップされるのである。
この二柱の神と同時に「建御雷之男神」が化成したこと、というか、「建御雷之男神」をここで登場させた意味が、潜んでいそうな気がする。
甕速日(みかはやひ)・樋速日(ひはやひ)の系譜
日本書紀 第九段によると、、、
- 父(?)>>>加具土命の血
- 母(?)>>>十握剣
- 本人>>>甕速日神
- 子神>>>樋速日神
- 孫神>>>武甕槌神
加具土命が男神であるだろうことから、とりあえず十握剣を母とした。
甕速日・樋速日が登場する神話
古事記によると、、、
次に、刀の根元から飛び散った血が、湯津石村(岩群)に付いたところから現れた神々の名は、
- 甕速日(みかはやひ)の神、
- 次に樋速日(ひのはやひ)の神、
- そして建御雷之男(たけみかつちのお)の神
という三柱の神です。
建御雷之男(たけみかつちのお)の神は、亦の名を建布都(たけふつ)の神、または豊布都(とよふつ)の神といいます。
日本書紀では、、、
剣のツバから垂れ落ちた血から神が成りました。
- その神は、甕速日神(みかはやひのかみ)といいます。
- 次に、熯速日神(ひのかやひのかみ)が成りました。
甕速日神は武甕槌神(たけみかづちのかみ)の祖先となります。
このように、古事記では三柱が並列だが、日本書記では武甕槌神を下位に置いていたようだ。
日本書紀 第九段には、、、
天石窟(あめのいわや)に、
- 稜威雄走神(いつおはしり)の子の甕速日神(みかはやひ)、
- そして甕速日神(みかはやひ)の子の熯速日神(ひのはやひ)、
- 熯速日神(ひのやはひ)の子の武甕槌神(たけみかずち)
が居ました。
とある。
稜威雄走神(いつおはしり)とは、古事記でいうところの「天之尾羽張神」(あめのおはばり)すなわち、加具土命を斬った「十握剣」のことを指す。
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