古事記|天照大神と須佐之男命③ 岩戸隠れ

2019年5月31日


速須佐之男命の悪行を見て畏れた天照大御神は、天の石屋戸に閉じ籠った。

岩戸隠れ

すると、高天原は悉く暗くなり、葦原中國も暗闇となりました。このように、世界はずっと夜になってしまったのです。

このことで大勢の邪神の騒ぐ声が夏の蠅のように充満し、あちらこちらに災いが起きました。

天照大御神が隠れた(太陽が隠れた)ために、世界が暗闇となったが、これを自然現象と捉えると、思い浮かぶのは日食。

日食は、地動説が当たり前の現代であっても不思議な気分になるものだ。当時の人々は太陽が死んだと思ったことだろう。

また、冬至という考え方もあろう。かつて冬至は暦の基点であり、古事記編纂当時の7世紀初頭、中国(唐)では、まさに冬至が一年の始まりだったはずだ。

いずれも、太陽が死んで生まれ変わる、すなわち再生を表す。

そこで、天安河の河原に神々が集まり、高御産巣日神の子である思金神に考えさせました。

まずは、

常世の長鳴き鳥を集めて鳴かせます。

次に、八尺鏡をつくります

  • 天安河の川上にある堅い石を取ってきて、天の金山の鉄をとってきて、
  • 鍛冶職人の「天津麻羅」(あまつまら)を探して
  • 「伊斯許理度売命」(いしごりどめのみこと)に命じて「八尺の鏡」を作らせます。

次に、八尺勾玉をつくります

  • 「玉祖命」(たまのおやのみこと)に命じて、「八尺の勾玉」が数珠繋ぎになった長い玉飾りを作らせます。

次に、占いをします

  • 「天児屋根命」(あめのこやねのみこと)と「布刀玉命」(ふとだまのみこと)を呼んできて、
  • 天の香山の雄鹿の肩の骨を抜き取り、天の香山のうわみず桜の木を取ってその骨を灼いて占わせます。

そして、榊に飾り付けをします。

  • 天の香山の枝葉の茂った榊を根こそぎ掘り起こしてきます。
  • 上の枝には、八尺の勾玉が数珠繋ぎになった長い玉飾りを取り付け、
  • 中の枝には、八尺の鏡を掛け、
  • 下の枝には、楮(こうぞ)の白い幣帛と麻の青い幣帛を垂れかけます。

天の安河

重要なことを会議したり、重要な出来事の舞台となる、高天原に流れる川。となれば、この川も重要な川のはず。

安(やす)は、八洲もしくは八瀬。すなわち、沢山の砂洲がある川、沢山の浅瀬がある川を表現しているとされる。

いずれにしても、浅い川。

浅瀬には魚が集まる。日光が川底まで届くので光合成がしやすい。すなわち藻などの植物が育ちやすい。さらには、川虫などが集まる。エサが豊富。というわけだ。

だから何?と思うのだが、そんな浅瀬の川底の泥は肥沃なのである。その泥をすくって農耕に利用するわけだ。重要な川と言えよう。

天香山(あめのかぐやま)

鹿や榊、そして蔓など、すべて天の香山のもの取り揃えさせたことから、天の香山も重要な山であるはずだ。

かぐやまの「かぐ」は、「かぐつち」の「かぐ」あるいは「かぐやひめ」の「かぐ」。

すなわち、火の山なのである。しかも「天の」だから「海の」。「海に聳える火山」という意味になる。思い浮かぶのは鹿児島の桜島。「かごしま」は「かぐしま」で「火の島」。

奈良県橿原市にある大和三山の一つ「香久山」は、高天原の天香山が落ちてきてできた山という伝承がある。そして、この山の頂に立ち、大和を見渡すことが、大王の証しとされた。

高天原は鹿児島だったのかもしれない。

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作戦開始

さて、準備は完了した。いよいよ、作戦開始である。

太刀玉命が、さまざまな物を飾り付けた榊を神聖な御幣として捧げ持ち、天児屋根命が、極めて神聖な祝詞を朗々と奏上します。

そして、高天原随一の腕力を誇る「天手力男神」(あめのたぢからお)が、戸の脇に隠れて立ち、

物怖じしない活発な女神「天宇受売命」(あめのうずめの)が、

  • 天の香山の日蔭鬘をタスキにかけ、
  • 天の直折鬘を髪飾りとして、
  • 天の香山の笹の葉を束ねて手に持ち、
  • 天の石屋戸の前に桶を伏せて、これを踏み鳴らしながら、
  • 神懸りして乳房をさらけだし、裳の紐を女陰(ほと)まで押し下げて、

陽気に舞いました。

これを見た八百万の神々は、高天原が震えんばかりに一斉にどっと笑いました。

鳥を鳴かせ、御幣を立て、榊を立て、鏡を置き、祝詞を奏上し、神楽を舞う。これはまさに、神道の祭である。祭りの原型がここに記されていると言えよう。

そして後世、伏せた桶の上で舞うという振舞いは、その本家本元「天宇受売命」の末裔とされる「猿女君」によって引き継がれた。

日神の子孫である天皇の魂の復活・更新を祈念する「鎮魂祭」の儀式として。

鎮魂祭はちょうど冬至の頃に執り行われる儀式。よって、この岩戸隠れは冬至を象徴しているのであろう。

さて、この祭りに参加した、思金神・伊斯許理度売命(石凝姥命)・玉祖命・天児屋根命・布刀玉命・天宇受売命・天手力男神。

これらの神々は、今後も天照大御神とその子孫、すなわち皇統を支える神々、いわ「親衛隊」の面々となる。

天照大御神は、なんだかおかしいぞと思い、天の石屋戸を少し開いて、その内側から、

「わたしが隠れたことで、高天原は自然と闇となり、また葦原中国も皆、闇となったのというのに、どうして天宇受売は楽しそうに踊り、八百万の神はこぞって笑っているのか?」

と言いました。すると天宇受売は、

「あなたよりも高貴な神がいらっしゃったので、嬉しくって踊っているのです」

と答えました。

そんな遣り取りをしている間に、天児屋根命と太刀玉命が、準備しておいた例の鏡を差し出して天照大御神に見せました。

すると天照大御神は、これはますます怪しいぞと思い、少し戸から出てきて鏡を覗き込ます。

チャンス到来。準備万端で戸の脇に隠れて立っていた例の天手力男神が、天照大御神の手をとって外に引っ張り出しました。

引っ張りだすや否や、布刀玉命が天照大御神の後ろに注連縄を張り渡して「ここから中に引き返すことは出来ません」と言いました。

このようにして、天照大御神は外に出たことで、高天原も葦原中國も、自然に明るさを取り戻したのです。

ここで、注連縄が登場した。注連縄は蛇のモチーフと言われている。

古代、忌み嫌われる動物として「ハエ」と「ネズミ」が挙げられる。いずれも疫病の原因であるし、ネズミは食料を荒らす。

蛇はネズミ除けになるという。蛇の抜け殻を置いておくだけで、ネズミは入ってこないらしい。まさに結界なのである。

古事記

Posted by リョウ